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オーラルケア 2026年7月17日 読了 約4分

歯の磨き方って結局どれが正解?
バス法・スクラビング法を論文で

「バス法がいい」「いや、スクラビング法だ」――歯みがきの方法って、聞く人によって答えが違いませんか? 実はそれ、研究のほうも意見が割れているからなんです。この記事では、都合のいい結論に寄せずに、論文が本当に言っていることをそのままお伝えします。
先に結論

「この磨き方が一番」と言えるだけのエビデンスは、今のところありません。2020年のシステマティックレビューは「ある1つの方法が他より優れているとする十分な根拠はまだない」と結論し、2024年のネットワークメタ解析も「歯みがき法の効果に関するエビデンスは限られている」としています。方法選びに悩むより、磨き残しを実際に確認しながら"全部の面に当てる"ほうが実りがあります。

出典:Rajwani AR, et al. Effectiveness of Manual Toothbrushing Techniques on Plaque and Gingivitis: A Systematic Review. Oral Health Prev Dent. 2020 PMID: 33028052

そもそも歯科界に「共通見解」がない

2020年のシステマティックレビューは、冒頭でこう述べています。「現在のところ、手用歯ブラシの磨き方の推奨について、歯科医師・オーラルヘルスセラピスト・歯科メーカーの間で共通見解は存在しない」。専門家の間でも割れている、というのが出発点です。

このレビューは3190件の文献から40件を関連ありと判定し、最終的に13件を分析対象にしました(ランダム化比較試験5件、非ランダム化試験7件、in vitro試験1件)。

「一番いい」に選ばれた方法がバラバラだった

おもしろいのはここからです。13件の研究のうち、統計的に有意に優れたプラーク除去を示した方法は、次のように見事に散らばりました

数字で見る:どの方法が"勝った"のか
出典:Rajwani 2020(Oral Health Prev Dent)PMID:33028052。13件の研究で「統計的に有意に優れたプラーク除去」を示した方法の内訳(件数)。
13
最終的に分析された研究の数
4
どの方法にも有意差なしだった研究
8種類
「優れている」とされた方法の種類数(=結論バラバラ)
チャーターズ法が優れた
2件
フォーンズ法が優れた
2件
スクラビング法が優れた
2件
バス法が優れた
1件
改良バス法が優れた
1件
ローリング法が優れた
1件
改良スティルマン法が優れた
1件
つまようじ法が優れた
1件
どの方法にも有意差なし
4件

つまり「勝った方法」が研究ごとに全部違うのです。さらに4件では有意差そのものが出ませんでした。レビューの著者らは「研究間のばらつきが大きく、理想的な磨き方について決定的な結論を出すことは不可能だった」と述べ、「1つの方法が他より優れているとする十分な根拠はまだない」と結論しています。

研究の質にも問題があります

2020年のレビューでは、13件のうちランダム化比較試験はわずか5件でした。著者らは「選ばれた研究のデザインや方法論の多くの面で過度なばらつきがあり、理想的な磨き方について結論を出す妨げになっている」とし、「CONSORTガイドラインに沿った質の高いランダム化比較試験が必要」と指摘しています。
「エビデンスがない」のではなく、「判断できるだけの質のエビデンスがまだ揃っていない」という状態です。

2024年の最新解析でも結論は同じだった

2024年、ドイツの研究チームがより新しい手法(ネットワークメタ解析)でこの問題に取り組みました。ランダム化比較試験のみを対象に、13の論文(15の研究)を特定。うち10件が解析に組み込め、フォーンズ法・バス法・スクラビング法が比較されています。

結果は、GRADEに基づくCINeMA法での確信度がプラークについて「非常に低い〜高い」、歯肉炎について「非常に低い〜低い」という評価でした。個々の所見はこう報告されています。

方法プラークへの効果歯肉炎への効果
フォーンズ法指導なしと比べ、おそらくわずかに減らすほとんど差がない可能性(確信度は非常に低い)
バス法ほとんど差がない可能性わずかに増やす可能性(確信度は非常に低い)
スクラビング法ほとんど差がない可能性(確信度は非常に低い)わずかに増やす可能性(確信度は非常に低い)

著者らの結論は一文です。「歯みがき法がブラッシング後のプラークや歯肉炎に及ぼす効果については、エビデンスが限られている」
あの"歯科の王道"であるバス法についても、「プラークにほとんど差がない可能性」という評価にとどまりました。

出典:Deinzer R, et al. Manual toothbrushing techniques for plaque removal and the prevention of gingivitis-A systematic review with network meta-analysis. PLoS One. 2024 PMID: 38968165
Qじゃあ、どう磨けばいいんですか?
A
現役歯科医師が回答正直にお答えすると、「この持ち方・この角度が絶対」と言えるデータを私たちはまだ持っていません。研究をふまえて言えるのは、方法名にこだわるより"どこを磨けていないか"を知るほうが先ということです。
やり方は決まっていなくても、磨き残しは目で確認できます。染め出し液を1回使ってみてください。多くの人は奥歯の外側、歯と歯ぐきの境目、噛み合わせの溝が残ります。そこに毛先が当たっているかどうか――これは磨き方の名前とは無関係に、誰でも改善できるポイントです。
それと、どの方法であってもゴシゴシ強く磨かないこと。強すぎるブラッシングは歯ぐきや歯を傷めることがあるため、そこは共通して気をつけたい点です。

参考:代表的な磨き方(優劣は未確立です)

方法やり方のイメージよく使われる場面
バス法毛先を歯と歯ぐきの境目に45度で当て、小刻みに震わせる歯周ケアの指導で定番
スクラビング法毛先を歯面に直角に当て、小刻みに横磨き覚えやすく広く普及
フォーンズ法歯を閉じて、大きく円を描くように動かす子どもへの指導で使われる
ローリング法歯ぐき側から歯の先へ回転させながら払う歯ぐきへの刺激が穏やか

※上の表は用語解説であり、どれが優れているかを示すものではありません。前述のとおり優劣は研究上まだ決着していません。個別の指導が必要な方はかかりつけ歯科でご相談ください。

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タイプ別に選ぶ "方法"より"磨き残しの確認"に投資する
歯垢染め出し液
磨き残しの場所を目で確かめる
歯ブラシ(コンパクトヘッド)
奥歯まで毛先を当てやすいサイズ
デンタルフロス
歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の間へ
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「正解探し」から降りられるのがメリット

磨き方の優劣が決着していないということは、逆に言えば「間違った磨き方をしているかも」と不安になる必要がないということでもあります。難しいテクニックを習得するより、毛先が当たっていない場所を1ヶ所減らすほうが現実的。染め出しで一度確認すれば、明日からの2分間の中身が変わります。

まとめ

※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。

参考文献

  1. 1. Rajwani AR, Hawes SND, To A, Quaranta A, Rincon Aguilar JC. Effectiveness of Manual Toothbrushing Techniques on Plaque and Gingivitis: A Systematic Review. Oral Health Prev Dent. 2020;18(4):843-854. doi:10.3290/j.ohpd.a45354. PMID: 33028052. PubMed
  2. 2. Deinzer R, Weik U, Eidenhardt Z, Leufkens D, Sälzer S. Manual toothbrushing techniques for plaque removal and the prevention of gingivitis-A systematic review with network meta-analysis. PLoS One. 2024;19(7):e0306302. doi:10.1371/journal.pone.0306302. PMID: 38968165. PubMed

出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。