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オーラルケア 2026年7月22日 読了 約6分

歯みがきのあと、口をゆすぐと
フッ素は流れてしまうの?

「歯みがきのあとは、たくさんゆすがない方がいい」。ここ数年で広まったこの話は、どこまで研究に裏づけられているのでしょうか。わかっていることと、まだわかっていないことを、分けて整理します。
先に結論

「口に残るフッ素の量」はすすぎ方で確かに変わります。少量の水で軽くすすいだほうが、歯と歯の間に残るフッ素は多くなったと報告されています。ただし「よくすすぐとむし歯が増える」ところまでは示されていません。3年間むし歯そのものを追った試験では、しっかりすすいだ学校と一度吐き出すだけの学校で差が出ませんでした。つまりすすぎを控えめにするのは理にかなった工夫ですが、神経質になる必要はないというのが現時点の正直な答えです。

🔍 この記事のむずかしい言葉(タップで開く)
(統計的に)有意
偶然では説明しにくい、意味のある差だと数字の上で言えること。
出典:Machiulskiene V, Richards A, Nyvad B, Baelum V. Prospective study of the effect of post-brushing rinsing behaviour on dental caries. Caries Res. 2002 PMID: 12399689

何がわかっていて、何がわかっていないか

調べたこと研究の結果強さ
歯と歯の間に残るフッ素の量少量の水で泡ごとすすぐと、たっぷりすすぐより約2.7倍多く残った小規模(20人)
唾液に残るフッ素の量歯みがき後にフッ素の入っていない洗口液を使うと、およそ半分に減った小規模(23人)
むし歯そのもの(3年間)しっかりすすぐ群と吐き出すだけの群で差なし276人・3年
国際的な推奨「すすぎは控えめに」で各国のガイドラインは一致専門家の合意

この表のねじれが、このテーマのすべてです。「口に残るフッ素」という途中の指標では差が出るのに、「むし歯ができたかどうか」という最終的な結果では差が確認されていない。2012年に専門家が集まってまとめた報告書も、「この分野には明確な指針を支える高品質のエビデンスが不足している」とはっきり書いています。

Q結局、ゆすがない方がいいの?
A
現役歯科医師が回答ゆすぐ水の量を減らすのはお金もかからず害もないので、試す価値はあります。ただし「ゆすいだからむし歯になる」と怖がる必要はありません。3年間の試験では差が出ていません。同じ試験ではるかに大きな差がついたのは、フッ素入り歯みがきを毎日続けたかどうかのほうでした。優先順位を間違えないことが大切です。
数字で見る:3年間でむし歯はどれだけ増えたか
出典:Machiulskiene 2002(Caries Res)。リトアニアの3校・276人を3年間追跡。数値は3年間のDMFS増加量(むし歯になった歯の面の数、初期の病変を含む)。A校とB校のあいだに統計的な差はなく、両校ともC校より有意に少ない(p<0.001)。
6.2
B校:吐き出すだけ(すすがない)
6.8
A校:コップの水でしっかりすすぐ
12.4
C校:毎日の歯みがき指導なし
B校:吐き出すだけ
6.2面
A校:しっかりすすぐ
6.8面
C校:歯みがき指導なし
12.4面

グラフを見れば、どこに大きな差があるかは一目瞭然です。すすぎ方の違い(6.2 と 6.8)は、歯みがきをするかしないか(6 台と 12.4)の違いに比べて、ずっと小さいのです。すすぎ方を気にするのは、毎日フッ素入り歯みがきを続けられている人が、その次に取り組む工夫だと考えてください。

「口に残るフッ素」では、はっきり差が出る

一方で、口の中に残るフッ素の量を測った研究では、すすぎ方の影響がはっきり出ています。20人を対象にした研究では、歯みがき粉の泡を残したまま少量(5mL)の水と混ぜて1分間ゆすぐ方法と、15mLの水で3回すばやくすすぐ方法を7日間ずつ試したところ、歯と歯の間のプラークに蓄積したフッ素は前者が平均2.7倍多いという結果でした。

つまりフッ素を口に長くとどめる工夫としては、確かに意味があるということです。ただし前述のとおり、この「フッ素が多く残る」が「むし歯が減る」につながるかどうかは、まだ確かめられていません。

気をつけたいのは「フッ素の入っていない洗口液」

23人を対象にした研究で、フッ素入り歯みがき(1,450ppm)のあとにフッ素の入っていない洗口液でゆすいだ場合、唾液に残るフッ素の量は水でゆすいだ場合のおよそ半分まで落ちました。一方、フッ素入りの洗口液を使った場合はこの低下が起きませんでした。研究者は「歯みがき後に使うなら、フッ素を含む洗口液を選べばこのリスクは最小限にできる」と書いています。マウスウォッシュを習慣にしている方は、歯みがき直後を避けるか、フッ素入りのものを選ぶのがおすすめです。

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タイプ別に選ぶ まず整えたいのは「フッ素を毎日使う」こと
高濃度フッ素歯みがき粉(1450ppm)
研究で最も大きな差がついたのはここ。まず毎日続けることから
フッ素配合の洗口液
歯みがき後に洗口液を使う習慣があるなら、フッ素入りを選ぶ
子ども用フッ素歯みがき粉
子どもでも「吐き出すだけ」でフッ素が長く残ったと報告されている
※価格・在庫は各サイトでご確認ください。上記は商品タイプ別の検索リンクです(広告)。フッ素の使用量・濃度はお子さんの年齢によって異なります。かかりつけの歯科医院にご相談ください。
今日からできる、無理のない落としどころ

研究の状況をふまえると、現実的なのはこのあたりです。①フッ素入り歯みがきを毎日きちんと使う(ここが一番効きます)②すすぎは少量の水で軽く一度③洗口液を使うならフッ素入りを選ぶか、歯みがき直後は避ける。どれもお金がかからず、やって損のない工夫です。逆に、うっかりしっかりゆすいでしまった日があっても、心配しすぎないでください。

まとめ

※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。

参考文献

  1. 1. Machiulskiene V, Richards A, Nyvad B, Baelum V. Prospective study of the effect of post-brushing rinsing behaviour on dental caries. Caries Res. 2002;36(5):301-7. doi:10.1159/000065955. PMID: 12399689. PubMed
  2. 2. Sjögren K, Birkhed D, Rangmar S, Reinhold AC. Fluoride in the interdental area after two different post-brushing water rinsing procedures. Caries Res. 1996;30(3):194-9. doi:10.1159/000262159. PMID: 8860029. PubMed
  3. 3. Duckworth RM, Maguire A, Omid N, Steen IN, McCracken GI, Zohoori FV. Effect of rinsing with mouthwashes after brushing with a fluoridated toothpaste on salivary fluoride concentration. Caries Res. 2009;43(5):391-6. doi:10.1159/000239753. PMID: 19776570. PubMed
  4. 4. Nazzal H, Duggal MS, Kowash MB, Kang J, Toumba KJ. Comparison of residual salivary fluoride retention using amine fluoride toothpastes in caries-free and caries-prone children. Eur Arch Paediatr Dent. 2016;17(3):165-9. PMID: 27102319. PubMed
  5. 5. Pitts N, Duckworth RM, Marsh P, Mutti B, Parnell C, Zero D. Post-brushing rinsing for the control of dental caries: exploration of the available evidence to establish what advice we should give our patients. Br Dent J. 2012;212(7):315-20. PMID: 22498529. PubMed

出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。文献5は一次研究ではなく専門家会議による合意報告です。