歯みがきのあと、口をゆすぐと
フッ素は流れてしまうの?
「口に残るフッ素の量」はすすぎ方で確かに変わります。少量の水で軽くすすいだほうが、歯と歯の間に残るフッ素は多くなったと報告されています。ただし「よくすすぐとむし歯が増える」ところまでは示されていません。3年間むし歯そのものを追った試験では、しっかりすすいだ学校と一度吐き出すだけの学校で差が出ませんでした。つまりすすぎを控えめにするのは理にかなった工夫ですが、神経質になる必要はないというのが現時点の正直な答えです。
🔍 この記事のむずかしい言葉(タップで開く)
- (統計的に)有意
- 偶然では説明しにくい、意味のある差だと数字の上で言えること。
何がわかっていて、何がわかっていないか
| 調べたこと | 研究の結果 | 強さ |
|---|---|---|
| 歯と歯の間に残るフッ素の量 | 少量の水で泡ごとすすぐと、たっぷりすすぐより約2.7倍多く残った | 小規模(20人) |
| 唾液に残るフッ素の量 | 歯みがき後にフッ素の入っていない洗口液を使うと、およそ半分に減った | 小規模(23人) |
| むし歯そのもの(3年間) | しっかりすすぐ群と吐き出すだけの群で差なし | 276人・3年 |
| 国際的な推奨 | 「すすぎは控えめに」で各国のガイドラインは一致 | 専門家の合意 |
この表のねじれが、このテーマのすべてです。「口に残るフッ素」という途中の指標では差が出るのに、「むし歯ができたかどうか」という最終的な結果では差が確認されていない。2012年に専門家が集まってまとめた報告書も、「この分野には明確な指針を支える高品質のエビデンスが不足している」とはっきり書いています。
グラフを見れば、どこに大きな差があるかは一目瞭然です。すすぎ方の違い(6.2 と 6.8)は、歯みがきをするかしないか(6 台と 12.4)の違いに比べて、ずっと小さいのです。すすぎ方を気にするのは、毎日フッ素入り歯みがきを続けられている人が、その次に取り組む工夫だと考えてください。
「口に残るフッ素」では、はっきり差が出る
一方で、口の中に残るフッ素の量を測った研究では、すすぎ方の影響がはっきり出ています。20人を対象にした研究では、歯みがき粉の泡を残したまま少量(5mL)の水と混ぜて1分間ゆすぐ方法と、15mLの水で3回すばやくすすぐ方法を7日間ずつ試したところ、歯と歯の間のプラークに蓄積したフッ素は前者が平均2.7倍多いという結果でした。
つまりフッ素を口に長くとどめる工夫としては、確かに意味があるということです。ただし前述のとおり、この「フッ素が多く残る」が「むし歯が減る」につながるかどうかは、まだ確かめられていません。
23人を対象にした研究で、フッ素入り歯みがき(1,450ppm)のあとにフッ素の入っていない洗口液でゆすいだ場合、唾液に残るフッ素の量は水でゆすいだ場合のおよそ半分まで落ちました。一方、フッ素入りの洗口液を使った場合はこの低下が起きませんでした。研究者は「歯みがき後に使うなら、フッ素を含む洗口液を選べばこのリスクは最小限にできる」と書いています。マウスウォッシュを習慣にしている方は、歯みがき直後を避けるか、フッ素入りのものを選ぶのがおすすめです。
研究の状況をふまえると、現実的なのはこのあたりです。①フッ素入り歯みがきを毎日きちんと使う(ここが一番効きます)、②すすぎは少量の水で軽く一度、③洗口液を使うならフッ素入りを選ぶか、歯みがき直後は避ける。どれもお金がかからず、やって損のない工夫です。逆に、うっかりしっかりゆすいでしまった日があっても、心配しすぎないでください。
- すすぎ方で口に残るフッ素の量は確かに変わる(歯と歯の間で約2.7倍の差)
- ただし3年間むし歯そのものを追った試験では、すすぎ方による差は出ていない
- 専門家の報告書自身が「高品質のエビデンスが不足している」と明記している
- 大きな差がつくのはフッ素入り歯みがきを毎日続けるかどうかのほう
- 歯みがき直後のフッ素なし洗口液は、唾液のフッ素をおよそ半分にした
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
参考文献
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- 3. Duckworth RM, Maguire A, Omid N, Steen IN, McCracken GI, Zohoori FV. Effect of rinsing with mouthwashes after brushing with a fluoridated toothpaste on salivary fluoride concentration. Caries Res. 2009;43(5):391-6. doi:10.1159/000239753. PMID: 19776570. PubMed
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- 5. Pitts N, Duckworth RM, Marsh P, Mutti B, Parnell C, Zero D. Post-brushing rinsing for the control of dental caries: exploration of the available evidence to establish what advice we should give our patients. Br Dent J. 2012;212(7):315-20. PMID: 22498529. PubMed
出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。文献5は一次研究ではなく専門家会議による合意報告です。