歯の定期検診って
何ヶ月ごとに行けばいいの?
まず押さえておきたいことが2つあります。ひとつは、「3ヶ月ごと」と「6ヶ月ごと」を直接くらべた質の高い試験は、まだ存在しないということ。もうひとつは、「間隔を延ばしても大丈夫」とよく引かれる英国の試験で24ヶ月まで延ばしてよいと判断されたのは、参加者2,372人のうち648人(27%)だけだったということです。残りの73%は「延ばすには適さない」と歯科医が判断していました。つまり間隔を延ばせるのは、条件を満たした一部の人。そして歯周病の治療を受けた人の管理は、3〜4ヶ月が現実的な標準です。
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- ランダム化比較試験(RCT)
- 参加者をくじ引きのように偶然で2つのグループに分け、条件をそろえて公平に比べる、いちばん信頼できる調べ方。
- コクラン
- イギリスを拠点に、世界中の研究を厳しくえり分けてまとめる国際的な団体。信頼度の高いまとめとして知られています。
「延ばしても大丈夫」の研究には、条件がついている
「検診の間隔は延ばしてもいい」という話の根拠として引かれるのが、英国のINTERVAL試験です。51の歯科医院で成人2,372人を4年間追いかけた、規模も質も高い試験です。ただし、ここにはほとんど紹介されない前提があります。
ひとつめ。参加したのはもともと定期的に検診を受けてきた人たちです。通院習慣がなく口の状態が悪化している人は、はじめから含まれていません。
ふたつめが重要です。この試験は2段構えの設計でした。24ヶ月まで延ばすグループに入れるかどうかは、担当の歯科医が「この人なら延ばしても臨床的に問題ない」と判断できた場合だけ。その結果、24ヶ月群に適格だったのは648人(27%)で、1,724人(73%)は不適格と判断されました。
よく引用される「24ヶ月でも6ヶ月でも歯ぐきの出血に差はなかった(差−0.91%)」という数字は、この選ばれた27%のなかでの比較です。全員に当てはめられる話ではありません。参加者全体で比べられたのは「リスクに応じた間隔」対「6ヶ月」だけでした(差0.78%)。
見落とされがちですが、この試験でも、これをまとめたコクランレビューでも、比較されたのは6ヶ月・24ヶ月・リスクに応じた間隔の3つだけです。3ヶ月間隔は検証の対象に入っていません。歯周病治療後の管理についても、コクランレビューは「異なる間隔で提供した場合を評価したランダム化試験は見つからなかった」と明記しています。つまり「3ヶ月がよい」という直接の証拠がないのと同じくらい、「6ヶ月で十分」という直接の証拠もないのです。研究がないことを「効果がない」と読み替えてはいけません。
30年間、歯をほとんど失わなかった人たちの通い方
では実際に、こまめな管理を長く続けるとどうなるのか。それを示したのが、スウェーデンで30年にわたって行われた有名な研究です。375人が予防プログラムを受け続けました。
その通い方は、最初の2年は2ヶ月ごと、3年目から30年目までは一人ひとりの必要性に応じて3〜12ヶ月ごと。結果、30年間で失った歯は、年齢層ごとに平均0.4〜1.8本にとどまりました。しかも失った歯の主な原因は歯の根の破折で、歯周病やむし歯の進行で失われた歯は、全体でわずか21本でした。
この研究は途中から対照群が置かれていないため、「3ヶ月だから良かった」と因果を断定することはできません。それでも、リスクに応じて短い間隔を含む管理を長期に続けた集団が、これだけ歯を保ったという事実は、通院間隔を考えるうえで無視できない材料です。
結局、自分は何ヶ月ごとに行けばいいのか
ここまでを踏まえると、「全員6ヶ月」でも「全員3ヶ月」でもなく、状態によって変わるというのが正直な答えになります。目安は次のとおりです。
| 状態 | 間隔の目安 | あてはまりやすい人 |
|---|---|---|
| 歯周病の治療を受けた | 3ヶ月前後 | 歯周病の治療後、安定した状態を保つ管理に入っている |
| リスクが高い | 3〜4ヶ月 | むし歯・歯ぐきの出血を繰り返す、喫煙、糖尿病がある |
| 平均的 | 6ヶ月前後 | 過去に治療歴はあるが、いまは落ち着いている |
| リスクが低い | 延ばすことも検討できる | むし歯・歯周病がほぼ無く、歯科医が延長可能と判断した場合 |
※これは一般的な目安です。最終的な間隔は口の状態を見て歯科医が判断します。なお日本では、歯周病の治療後に行う管理は制度上も3ヶ月ごとを基本として組み立てられています。「歯科医院で3ヶ月と言われた」のには、こうした背景があります。
この試験の著者らは結論で、患者自身が頻繁な検診に高い価値を認めており、そのために費用を払う意思があることも同時に報告しています。研究が示したのは「条件を満たした人なら間隔を延ばしても4年間の歯ぐきの状態は変わらなかった」ということであって、通院を減らすことを勧めるものではありません。歯周病は痛みが出ないまま進みます。間隔を空けすぎると、症状が出る前に見つける機会そのものを失います。
間隔を延ばしてよい人と、短く保つべき人がいます。その線引きは自分では判断できません。歯ぐきの状態、これまでの治療歴、喫煙や糖尿病の有無を見て決めるものだからです。次の受診のときに「私はどれくらいの間隔がいいですか」と聞いてみてください。歯周病の治療を受けたことがある方なら、3ヶ月前後の管理を続けるほうが安心です。
- 「3ヶ月ごと」と「6ヶ月ごと」を直接くらべた試験は存在しない。3ヶ月は検証の対象に入っていない
- よく引かれる英国の試験で24ヶ月まで延ばしてよいと判断されたのは2,372人中648人(27%)。73%は不適格だった
- 参加者はいずれももともと定期的に通っていた人で、通院習慣のない人は含まれていない
- スウェーデンで3〜12ヶ月の間隔で30年管理した集団が失った歯は平均0.4〜1.8本、歯周病・むし歯による喪失は全体で21本
- 歯周病の治療を受けた人は3ヶ月前後、リスクが高い人は3〜4ヶ月が目安。延ばせるのは条件を満たした人だけ
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
参考文献
- 1. Clarkson JE, Pitts NB, Fee PA, Goulao B, Boyers D, Ramsay CR, et al. Examining the effectiveness of different dental recall strategies on maintenance of optimum oral health: the INTERVAL dental recalls randomised controlled trial. Br Dent J. 2021;230(4):236-243. doi:10.1038/s41415-021-2612-0. PMID: 33637927. PubMed
- 2. Fee PA, Riley P, Worthington HV, Clarkson JE, Boyers D, Beirne PV. Recall intervals for oral health in primary care patients. Cochrane Database Syst Rev. 2020;10(10):CD004346. doi:10.1002/14651858.CD004346.pub5. PMID: 33053198. PubMed
- 3. Manresa C, Sanz-Miralles EC, Twigg J, Bravo M. Supportive periodontal therapy (SPT) for maintaining the dentition in adults treated for periodontitis. Cochrane Database Syst Rev. 2018;1(1):CD009376. doi:10.1002/14651858.CD009376.pub2. PMID: 29291254. PubMed
- 4. Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol. 2004;31(9):749-757. doi:10.1111/j.1600-051X.2004.00563.x. PMID: 15312097. PubMed
出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。