歯周病治療は一気にやった方がいいの?
口全体を短期間でまとめて治療する「フルマウス法」に、分割して行う従来法を上回る明確な追加的優位はないと報告されています。コクランレビューでは、歯ぐきの改善(ポケットの深さなど)に方法による大きな差は見られませんでした。どちらが優れているかより、通いやすさや体への負担で選んでよいということです。
「フルマウス法」と「分割法」って何が違うの?
歯周病の基本治療は、歯ぐきの中の歯石や細菌のかたまりを取り除くスケーリング・ルートプレーニング(SRP)です。進め方には大きく2つあります。従来からの分割法は、口を4つのブロック(左上・右上・左下・右下)に分け、1回1ブロックずつ、数週間かけて仕上げる方法。一方のフルマウス法は、24時間以内などごく短期間に口全体をまとめて行う考え方で、「治療した所へ、未治療の所から細菌が再定着するのを防ぐ」というねらいから提案されました。
直感的には「一気にやる方が細菌を残さず有利そう」に思えます。ところが上のコクランレビューでは、ポケットの深さの改善などの臨床成績に方法間で明確な差はなかったと報告されています。つまり「まとめてやったから治りが良い」とは言い切れないのが現時点のエビデンスです。
結局どう選べばいいの?
差がはっきりしないなら、患者さんの都合と負担で決めてよいというのが実践的な答えです。忙しくて通院回数を減らしたい方にはまとめる方法が合いますし、一度に長時間の処置がつらい方や、範囲の広い重症例では分割の方が体にやさしいこともあります。どちらを選んでも共通して大事なのは、治療後の毎日のセルフケアと定期メンテナンス。歯石を取っても、磨き残しが続けばまた戻ります。歯間清掃を含めた家庭ケアこそ本丸だと考えてください。
フルマウス法でも分割法でも、治療後に磨き残しが続けば歯垢・歯石はまた戻り、歯周病は再び進みます。歯周病が進行すると歯を支える骨が溶け、元には戻りません。どちらの方法を選んでも、通院だけで安心せず日々のセルフケアを続けることが欠かせません。
臨床成績に大きな差がないと報告されているからこそ、通院回数を減らしたいならまとめて、負担を抑えたいなら分割と、自分が続けやすい方法を選べます。そこに毎日のセルフケアと定期メンテを重ねれば、取り戻した歯ぐきの状態を長く保ちやすくなります。
- フルマウス一括法に従来法を上回る明確な優位はないと報告
- 臨床成績は近いので通いやすさ・体の負担で選んでよい
- どちらを選んでも毎日のセルフケアとメンテが本丸
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
参考文献
- 1. Eberhard J, Jepsen S, Jervøe-Storm PM, Needleman I, Worthington HV. Full-mouth treatment modalities (within 24 hours) for chronic periodontitis in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015(4):CD004622. doi:10.1002/14651858.CD004622.pub3. PMID: 25884249. PubMed
出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。