おねしょが治らない…
上あごの拡大で改善するの?
上顎急速拡大(RME=上あごを広げる装置)が、治療に抵抗性の夜尿(おねしょ)を減らすとの報告があります。ただしこれは「まず試すべき第一の治療」ではなく、いろいろな方法で改善しなかったケースでの選択肢の一つという位置づけ。まずは小児科・泌尿器の標準的なアプローチが基本です。
なぜ「上あごの拡大」がおねしょと関係するの?
不思議に感じますよね。上顎急速拡大は本来、狭い上あごを横に広げて歯並びやかみ合わせを整えるための治療です。この装置は同時に鼻の通り道(鼻腔)を広げる方向にも働くため、鼻づまりや睡眠時の呼吸、そして睡眠の質に影響することがあると考えられています。夜尿には睡眠の深さや覚醒の問題も関わるため、呼吸・睡眠の改善を介して夜尿が減るのではという文脈で研究されてきました。
実際、治療抵抗性の夜尿に対してRMEが夜尿を減らすとの報告があります。とはいえ全員に同じように効くわけではなく、効果の程度もケースによって差があるのが正直なところです。
「歯科でおねしょを治す」と単純化しないで
大切なのは、順番を間違えないことです。おねしょの多くは成長とともに改善しますし、まずは生活指導・アラーム療法・薬物療法といった標準的な治療が土台になります。RMEはあくまで、それでも続く難治のケースで、しかも上あごが狭いなど歯科的な適応がある子に検討する選択肢です。「歯を広げればおねしょが治る」という単純な話ではない、とご理解ください。
「歯を広げればおねしょが治る」と単純化するのは禁物です。RMEはまず試すべき第一の治療ではありません。自己判断で歯科の拡大装置に飛びつくと、本来先に行うべき小児科・泌尿器での標準治療が後回しになり、適切なタイミングを逃すおそれがあります。
おねしょの多くは成長とともに自然に落ち着き、まずは生活指導・アラーム療法・薬物療法といった標準治療で改善が期待できます。そのうえで難治かつ上あごが狭いなど歯科的な適応があるお子さんに、選択肢を一つ増やせる——小児科と歯科の連携で、あせらず前向きに考えられます。
- 上顎急速拡大(RME)が治療抵抗性の夜尿を減らすとの報告がある
- 効果は呼吸・睡眠の改善を介する可能性があるが、万能ではない
- まずは小児科の標準治療が土台。難治かつ歯科的適応がある子の選択肢
※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。
参考文献
- 1. Khalaf K, Mansour D, Sawalha Z, Habrawi S. Rapid Maxillary Expansion and Nocturnal Enuresis in Children and Adolescents: A Systematic Review of Controlled Clinical Trials. ScientificWorldJournal. 2021;2021:1004629. doi:10.1155/2021/1004629. PMID: 34188609. PubMed
出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。