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インプラント 2026年7月11日 読了 約4分

タバコを吸っているとインプラントは
失敗しやすいの?

「インプラントを入れたいけど、タバコはやめられない」——カウンセリングでよく聞く悩みです。喫煙が治療にマイナスなのは知られていますが、実際にどのくらいリスクが上がるのか。数字で見るとイメージが変わるかもしれません。
先に結論

107件の研究を集めた2015年の解析では、インプラントが失敗した割合は喫煙者で6.35%(19,836本中1,259本)、非喫煙者で3.18%(60,464本中1,923本)でした。喫煙は「絶対に入れられない」理由ではありませんが、失敗率が高いことは一貫して報告されている要因です。治療前後の禁煙が、成功への後押しになると考えられます。

出典:Chrcanovic BR, et al. Smoking and dental implants: A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2015;43(5):487-98 PMID: 25778741
Naseri R, Yaghini J, Feizi A. Levels of smoking and dental implants failure: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2020;47(4):518-528 PMID: 31955453

なぜタバコでインプラントが失敗しやすくなるの?

インプラントが成功するには、埋め込んだチタンと骨がしっかり結合し(オッセオインテグレーション)、その状態が維持される必要があります。喫煙はこのプロセスを何段階かで邪魔すると考えられています。まずニコチンによって血管が収縮し、傷口への血流や酸素の供給が落ちます。血流は骨や歯ぐきが治るために欠かせないため、手術後の治りが悪くなりやすいとされます。

さらに、タバコの煙は細菌に対する体の防御力を弱め、インプラントまわりの炎症(周囲炎)が進みやすい環境をつくるとも言われます。2015年の解析で示された失敗率の差(6.35%と3.18%)は、こうした要因が積み重なった結果ではないかと考えられています。

大切なのは、喫煙者だからといって全員が失敗するわけではない、という点です。6.35%という数字は、裏を返せば喫煙者の9割以上では失敗が起きていないということでもあります。あくまで割合の話です。だからこそ、少なくとも手術の前後だけでも禁煙できると、成功の可能性を自分の側に引き寄せられます。

ネットでよく見る「2015年のメタ解析で◯倍」にご注意

この2015年の論文(PMID: 25778741)について、「喫煙者の失敗リスクは非喫煙者の◯倍」という統合リスク比(RR)を紹介する記事をネット上でよく見かけます。しかし、この論文の抄録に統合RR・オッズ比は一切記載されていません(本文は購読制で一般には読めません)。抄録にあるのは、上に挙げた実数と割合だけです。当サイトでは、抄録で確認できない数字は載せない方針をとっています。

「1日◯本以上でRR◯倍」といった数字つきの比較を知りたい場合は、後述の2020年の論文が実際にその数値を報告しています。

Q手術のときだけ禁煙すれば大丈夫ですか?
A
現役歯科医師が回答正直にお話しすると、ずっと吸わないのが一番です。ただ現実的には難しい方も多いので、私は最低でも手術前後のまとまった期間の禁煙を強くおすすめしています。傷が治る時期の血流と免疫が、成功を大きく左右するからです。そしてインプラントを入れたあとも、喫煙を続けると周囲炎のリスクが残ります。これを機に禁煙にチャレンジしたい方には、禁煙サポートの活用も一つの手だと思います。
数字で見る:喫煙とインプラントの失敗率
出典:Chrcanovic 2015 システマティックレビュー・メタ分析 PMID:25778741(107件の研究)。数値は抄録に記載された実数から計算した、埋入されたインプラント本数あたりの失敗率です。この抄録には統合リスク比(RR)の記載がないため、当サイトでは「◯倍」という表現を用いていません。
6.35%
喫煙者の失敗率(19,836本中1,259本)
3.18%
非喫煙者の失敗率(60,464本中1,923本)
非喫煙者
3.18%
喫煙者
6.35%
「本数」で見る:1日20本超 vs 吸わない人
出典:Naseri 2020 システマティックレビュー・メタ分析 PMID:31955453(23件の研究)。※上のグラフ(2015年の論文)とは別の論文・別の解析です。1日20本を超えて吸う人と、吸わない人を比べたリスク比(RR)。
2.45
インプラント単位のRR(95%CI 1.42–4.22、p=.001)
4
患者単位のRR(95%CI 2.72–5.89、p<.001)
吸わない人
1(基準)
20本超(本単位)
RR 2.45
20本超(患者単位)
RR 4

この2020年の論文の著者らは、「1日に吸う本数が増えるほど、インプラント失敗のリスクが上がった」と結論づけています。ただし、ここで読み違えてはいけない点が2つあります。

1つ目は、これらはいずれも観察研究をまとめた解析であり、「喫煙が失敗を引き起こした」という因果関係を証明したものではないということです。喫煙する方は歯周病の既往や口腔清掃の習慣など、他の条件も異なる傾向があり、その影響を完全には切り離せません。

2つ目は、「何本までなら安全」という線引きはこれらの論文からは導けないということです。本数の少ないグループで統計的な有意差が出なかったとしても、それは「安全だと確かめられた」という意味ではなく、単にそのグループの人数が少なく、差を検出できるだけの精度がなかった可能性を含みます。「有意差なし」は「差がない」の証明ではありません。

吸ったまま入れると起きやすいこと

喫煙はニコチンによる血流低下で手術後の治りを悪くし、細菌への防御力の低下でインプラント周囲の炎症(周囲炎)が進みやすい環境をつくると言われます。全員が失敗するわけではありませんが、喫煙者で失敗率が高いことは複数の解析で一貫して示されていることは知っておきたいポイントです。

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手術前後の禁煙で成功を引き寄せる

傷が治る時期の血流と免疫が、成功を大きく左右します。少なくとも手術前後のまとまった期間の禁煙ができると、成功の可能性を自分の側に引き寄せられます。これを機に禁煙にチャレンジする方には、禁煙サポートの活用も一つの手です。

まとめ

※本記事は公開されている学術論文をもとにした一般的な情報提供であり、特定の治療・製品の効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は歯科医院にご相談ください。

参考文献

  1. 1. Chrcanovic BR, Albrektsson T, Wennerberg A. Smoking and dental implants: A systematic review and meta-analysis. J Dent. 2015;43(5):487-98. doi:10.1016/j.jdent.2015.03.003. PMID: 25778741. PubMed
  2. 2. Naseri R, Yaghini J, Feizi A. Levels of smoking and dental implants failure: A systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2020;47(4):518-528. doi:10.1111/jcpe.13257. PMID: 31955453. PubMed

出典はPubMed収載の書誌情報にもとづき、バンクーバー方式(ICMJE)で記載しています。